『退職』にも、大きく分けて労働者からの申し出による『自己都合退職』と、解雇や事業の縮小・廃止など
による『会社都合退職』のふたつがあります。
解雇については労働基準法などによる一定のルールがあり、解雇通告後の労働者とのトラブルを回避
するために、会社側もコンプライアンス(法令遵守)に気を配るところでもあります。
ところが、労働者自身が退職を申し出る『自己都合退職』にも、案外トラブルが生じるものなのです。
『事務所便り』ブログ版・第15弾は、退職届の撤回についてのお話です。
『退職届』と『退職願』の違いについても、一度再確認をしてみましょう。
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「退職届の撤回」をめぐるトラブル
◆労使間の退職時トラブル
退職の際に労使間でトラブルが生じることがあります。最近では、在職中に転職先を決めていたが、転職先の企業の経営状況悪化などの理由により、提出した退職届を撤回したいと申し出てくる労働者とのトラブルが発生することもあるようです。
◆退職届を撤回できるかの判断
退職届には、労働者側から一方的に労働契約を解消する解約告知としての「退職届」と、労働契約の合意解約の申込みとしての「退職願」の2つのケースがあります。前者の「退職届」の場合、基本的に撤回することはできませんが、後者の「退職願」の場合は、撤回できる場合があります。この「退職願」の場合の退職の効果については、会社の承認や承諾により発生するものとされ、会社の承認や承諾がなされて合意退職が成立するまでの間は撤回ができるものと考えられています。
労働者が退職届を直属の上司に提出したものの、上司がそれを預かったまま人事部長など決定権のある人へ決裁を上げていなかった場合についても、撤回できる可能性があります。退職届を受け取った者が承認の権限を持つかどうか、そして、それを正式に受け取ったのか、預かりで受け取ったのかが撤回できるかどうかの決め手となります。
◆トラブルを未然に防ぐためには
労働者が退職届を提出した後、会社がそれを「承認された状態」なのか「預かりの状態」なのかを曖昧にしておくと、すでに新たな労働者の採用を決めていたケースなどで、労働者から「退職届を撤回したい」と申出があった場合にトラブルに発展する可能性があります。退職届を受け取った場合、会社としては、承認や承諾をして合意退職が成立した時には、退職届を受理し、『承認しました』という意味の通知書などを作成して労働者に渡すことによって、退職届を撤回することはできないと労働者に示すことができます。
何事もトラブルが起こってから対応するのではなく、予測されるトラブルを未然に回避する方策を考えておくことを、常に意識しておきたいものです。